短編小説

弓

 起

 弓道部の練習を終えた笹木良樹は辻野広也と校舎を出た。
 弓袋に入れた弓を背負いつつ二人は歩道を並んで歩いてゆく。
 明日は県下の高校の弓道大会なのである。
 良樹が広也に言う。
「今 ...

短編小説

警視庁

 1

 警察署の正面玄関。夜の八時を過ぎている。鷹木はドアを開けると、カウンターで隔てられた中を見回した。数人の警官が何やら机に向かっている。そのうちのニ十代後半の一人がこちらを見てゆっくりと立ち上がった。
「どう ...

短編小説

毒を試させるクレオパトラ

紀元前45年6月。
カイロの北西にあり海に面しているアレクサンドリアは、地中海の真
珠と呼ばれた古代エジプトの首都である。
その街の広場で赤銅の肌に白い麻布を腰に巻いただけの少年ユースフ
が父ムスタファ ...

短編小説

山奥に空飛ぶ吸い口

徳川家康の天下統一から二百年、幕府の幕府の財政は次第に逼迫
し、十代家治時の田沼意次による改革に続いて、十一代家斉は松平
定信に寛政の改革を実行させた。
しかし改革は家斉にとっても窮屈すぎて家斉は松平定信を罷免 ...

短編小説

白馬の王妃

11世紀、イングランドはコヴェントリー城の広場に人々が集まった。
当時の人々は城を囲む城壁の内側に軒を並べて住んでいたのだが、城主
から大事な知らせがあると聞かされていた人々は衛兵二人に先導されて
現れたもった ...