短編小説

弓

 起

 弓道部の練習を終えた笹木良樹は辻野広也と校舎を出た。
 弓袋に入れた弓を背負いつつ二人は歩道を並んで歩いてゆく。
 明日は県下の高校の弓道大会なのである。
 良樹が広也に言う。
「今 ...

短編小説

警視庁

 1

 警察署の正面玄関。夜の八時を過ぎている。鷹木はドアを開けると、カウンターで隔てられた中を見回した。数人の警官が何やら机に向かっている。そのうちのニ十代後半の一人がこちらを見てゆっくりと立ち上がった。
「どう ...